AIとの融合
科学における基本的な量の1つは、数を数えることです。例えば、「1個」や「2個」と数えます。しかし、アボガドロ数の発見以来、あまりにも数が多すぎるため、分子を一つひとつ数えることは困難になりました。当時は1つの分子を数える方法がなかったからです。
しかし、現代では「1つ」が非常に重要になっています。例えば、1つのがん細胞や1つのタンパク質が、全体に大きな影響を及ぼすことがあります。これは科学の世界だけでなく、1人の異端児が社会を大きく変えるイノベーションを生み出すように、小さな1つが大きな価値を持つ世界へと変化しています。 私たちは、この「1つ」を正確に捉えるために、ナノギャップを用いた1分子計測という技術とAIを組み合わせ、1分子カウンティング法を研究しています。これは、これまで不可能だった1分子を検出し、その種類を識別して数を数える技術です。
現在、私たちはAという1種類の分子を数えることに成功しています。しかし、実際のサンプルにはAやBなど複数種類の分子が混在していることがほとんどです。そこで、私たちはAIを使って、複数の分子を1分子レベルで検出し、識別し、種類ごとに数を数える技術を開発しています。
この技術が完成すれば、さまざまな物質が混じったサンプルの中から、目的の分子だけを正確に検出・識別・カウントできるようになります。これにより、従来の分析手法のように、目的の分子だけを取り出すための複雑な作業が不要になり、分析プロセスが劇的に簡略化されます。私たちの研究は、分析化学のあり方を大きく変える可能性を秘めています。
