国産DNAシークエンサーの必要性
DNAシークエンサーは、遺伝子診断や犯罪捜査、がん治療における遺伝子検査など、幅広い分野で不可欠な装置となっています。しかし、現在、国内で使われているDNAシークエンサーはすべて海外製品です。これにより、莫大な国費が流出するだけでなく、国民の重要な遺伝子データが海外に渡ってしまうリスクも生じています。さらに、海外からの供給が止まれば、最先端の医療を国民に提供できなくなる事態にもつながりかねません。 私たちは、この課題を解決するため、国産のDNAシークエンサーを開発しています。できる限り早く製品化し、国の安全と医療の発展に貢献することを目指します。
私たちが開発する「生体分子シークエンサー」の革新性
私たちが開発しているのは、単なるDNAシークエンサーではありません。これは「生体分子シークエンサー」と呼び、DNAだけでなく、RNAの塩基配列や、ペプチドのアミノ酸配列も読み解くことができます。また、病気の兆候を示す化学修飾された分子(エピジェネティックな情報)も直接解析できるため、以下のような高度な分析が可能になります。 エピジェネティック解析 エピトランスクリプトーム解析 翻訳後修飾解析 さらに、この装置は1つの分子を個別に数えることができるため、特定のDNAやRNAがどれくらい存在するかを正確に定量できます。DNA、RNA、ペプチドを包括的に解析できるこの技術は、単なる検査にとどまらず、生命の働きそのものを解き明かす鍵となるのです。
がん治療への新たな挑戦
DNAシークエンサーは、がんパネル検査を可能にしましたが、私たちはさらにその先を見据えています。現在、がん治療の最前線にある「がん免疫療法」に、私たちの技術を応用しようとしています。 がん細胞の表面には、がん特有の目印である「がん抗原ペプチド」が存在します。このペプチドを取り出して増やし、患者に投与することで、T細胞ががん細胞を攻撃するように促します。しかし、このがん抗原ペプチドは非常に微量で、効率的に見つけ出す技術がまだ確立されていません。 私たちは、開発中の生体分子シークエンサーを使って、この極微量ながん抗原ペプチドを効率的に探索する研究を進めています。この技術が確立すれば、生体分子シークエンサーは単なる検査装置を超え、新しい治療法や新薬を生み出すための創薬ツールへと進化するでしょう。
