ウイルス物質工学

未知のウイルスをAIナノポアで解明する

私たちはこれまでに、AIナノポアを使った新型コロナウイルスの検査法を開発し、1万件以上の臨床検体を測定してきました。また、春の甲子園での実地試験も成功させ、この技術の有効性を証明しました。しかし、次に起こるかもしれない新興感染症に備えるには、未知のウイルスを素早く見つけ出し、特定する技術が必要です。

ウイルスが発見されてから約180年間、新しいウイルスは「コッホの4原則」という、ウイルスが引き起こす「現象」を定義するルールに基づいて特定されてきました。しかし、ウイルス検査法を開発するには、ウイルスの大きさや形、表面の電気的な性質といった「物質」としての特性を明らかにする必要があります。

検査法は「技術」です。技術を実現するには、正確な設計図、つまりウイルスの詳細な物性データが不可欠なのです。

私たちは、この原点に立ち返り、AIナノポアにナノ流路や分光法を組み合わせた新しい測定システムを開発しています。このシステムを使ってウイルスの物性を詳細に解明し、コッホの4原則を物質の言葉で再定義することを目指します。これにより、未知のウイルスを迅速に特定し、AIナノポアを応用した新しい検査法をすぐに開発できるようになります。未来のパンデミックをいち早く食い止め、社会を守ることを目指します。


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