Research

本研究分野では、ナノテクノロジーを駆使して作るナノデバイスを用いることで、1分子の電気伝導度、温度、熱、構造などを調べる1分子解析技術を開発し、1分子科学の基礎を開拓しています。また、1分子解析技術の応用により、オーダーメイド医療を担う1分子DNA・RNAシークエンサーや1分子構造解析法を開発しています。基礎から応用まで一貫した研究により、安心・安全・健康な社会に資するバイオイノベーションの創出を目指しています。


シングルナノ技術

10nm未満の超微細な「ものづくり」技術

私たちは、10ナノメートル(nm)より小さい、非常に微細な構造を作る技術を開発しています。10ナノメートルというサイズは、例えるなら、髪の毛の太さの1万分の1程度という、想像もつかないほど小さな世界です。

 具体的には、以下の2つの構造を高精度に作る技術です。
 ナノギャップ:電極と電極の間の隙間を10nm未満にする技術
 ナノポア:直径が10nm未満の、非常に小さな穴を開ける技術

これらの超微細な構造を、「電子線描画装置」という、電子の線を鉛筆のように使って、ミクロな世界に絵を描く装置と、半導体を作る技術を組み合わせて作っています。
また、この技術を使うことで、毎回同じ形、同じ大きさのものを、たくさん(高い再現性)かつ、失敗を少なく(高い歩留まり)作ることができるようになります。これにより、私たちの生活を豊かにする新しい電子機器や医療機器の開発につながります。

ナノギャップ

Nanogap

ナノギャップは、とても狭いすき間(約1ナノメートル、髪の毛の太さの10万分の1ほど)を持つ特別な電極です。この電極のすき間に電圧をかけると、トンネル電流という、量子力学というミクロな世界の不思議な現象によって生まれるとても弱い電流が流れます。もし、この狭いすき間にDNAやナノ粒子のような小さな分子が入ると、その分子の種類によって流れるトンネル電流の量が変わります。

谷口研究室では、この原理を使って、DNARNA、ペプチド、神経伝達物質などの生体分子を、たった1つの分子だけで見つけ、その種類を判別できる新しい技術を開発しています。

ナノポア

Nanopore

ナノポアは、シリコンの基板に開けられた、直径が数百ナノメートル以下の非常に小さな穴です。この穴を塩化カリウム(KCl)などの溶液で満たし、上下の電極間に電圧をかけると、ごくわずかなイオン電流(ナノアンペア程度)が流れます。

このナノポアに特定の物質が侵入すると、イオンの流れが妨げられるため、電流が一時的に減少します。この電流の変化は、物質特有の波形として現れ、物質の大きさや構造、表面の電荷に関する情報を含んでいます。

しかし、この波形を目視で識別するのは非常に難しい場合があります。特に、大きさが似ている物質同士を区別することは困難です。そこで、私たちはAI(人工知能)を活用しています。AIに多数の波形を学習させることで、人間には見分けられないような、わずかな波形の違いから物質を高精度に識別できるようになります。

谷口研究室では、検出対象に合わせたナノポアを開発し、この技術を用いてウイルスや細菌を一つひとつ識別する研究を進めています。